沖縄県特産の酒
沖縄の酒といえば、泡盛である。泡盛は、日本の酒税法 の上では「焼酎乙類」に分類される本格焼酎である。本格焼酎は原料によって、 いも焼酎、米焼酎、麦焼酎、そば焼酎、果糖焼酎などに分けられる が、泡盛はいったいほかの本格焼酎と何がちがうのだろうか。 沖縄で造られる本格焼酎に「本場泡盛」 の表示が認められたのは、昭和58年のこと。本格焼酎のなかでも泡盛は米を原料としており、沖縄県原産の黒麹菌 (別名、泡盛菌)で造った米麹を水と混ぜて発酵させ、蒸留 した酒のことをいう。  現在、米焼酎のほとんどは、もろみ造りに蒸米を加えるという二度の仕込みが行なわれている。これに対して、泡盛は一度の仕込みでもろみを造るというのが、大きな特徴である。 つまり、もろみは米麹と水だけで仕込まれるのである。また、 原料となる米は多くの蔵元でタイ米を使用し、風味のうえ で十分にその特色をあらわしている。



飛躍する泡盛
泡盛は現在、沖縄県内にある47の蔵元で生産されている。蔵は沖縄本島をはじめ、久米島、宮古島、石垣島、与耶国島など各地にあり、それぞれの個性を生かした泡盛造りが行なわれている。最新設備を整えた大規模な醸造工場から、昔ながらの手造りを行なう小さな蔵までさまぎまである。 ここ数年の泡盛の消費量は、県内外を問わず、めざましい勢いで 伸びてきている。その背景には、製造方法の技術改善による 品質向上や、各蔵元の活発な販売促進活動などが挙げられる。 かつては、アルコール度が高く、独特の臭いがあるので、若者や 県外の人々から敬遠される向きもあった泡盛。 しかし、最近では消費者の嗜好に合わせてスムーズでライトな 味わいの泡盛も登場している。



寝かせるほどまろやかになる
今までは、新酒の泡盛もかなりなめらかで口当たりのよいものに仕上がっているが、より芳醇で時の深みを求めるのならクース(泡盛の古酒)がおすすめ。泡盛は、長い年月をかけて勢流させると酒の質が向上し、深い味わいが生まれる。三年以上寝かせた泡盛がクースと呼ばれる酒であ る。
 かつて、首里の旧家ではそれぞれ秘蔵のクースを所有し ていた。戦前、琉球国王の血をひく尚家には、200年熟成きせたクースがあったといわれる。  琉球最後の国王・尚泰の四男である尚順は、クースについての随筆を現している。そのなかにクース造りに欠かせない「仕次ぎ」の方法が紹介されている。これはいくつか のかめを用意して、年代順に酒を貯蔵する方法だ。  1番手、2番手、3番手と三個以上のかめに酒を貯蔵し、古酒、準古酒、新酒という順序を作る。アヒャー(親酒)と呼ば れる1番手の古酒から一合汲みだしたら、2番手の準古酒から 補充する。そして準古酒には新酒を加えるといった仕組み。親酒にいきなりか新酒を加えたら、もっとも優れた新酒でも、いっ ぺんでだいなしになってしまうそうだ。  クースは「仕次ぎ」の手法によって、古酒の風味を保ちつつ、 芳醇な香りと深い味わいを育て、数百年という熟成を可能にして いる。近年、市場に出回るクースの比率が高まり、クースのすばらしい味わいが広く知られるようになった。



暑さに強い黒麹菌
泡盛は、拳を発酵させるのに黒麹菌が使われている。九州を中心とする焼酎にはおもに白麹菌が使用されるが、これは泡盛に使われる黒麹菌が白く変化したもの。黒麹菌が九州にもたらされたのは、明治の終わりごろで、それまでは焼酎の麹は、清酒と同じ黄麹菌で造られていた。
 黒麹菌の大きな特徴はクエン酸を豊富に作り出す点にある。酸の多い麹で仕込んだもろみは雑菌が繁殖しにくく、気温の高い沖縄で、もろみを腐らせる心配が少ない。また、黒麹菌は米のでんぷんを分解するカに優れ、仕上がった酒の風味も よくなるといわれている。
 年間の平均気温が22度以上で、平均湿度が70パーセント以上 ある沖縄の気候。このような温暖な気候は、黒麹菌を使用する泡盛にとって最適な環境なのである。



タイ米が醸す泡盛の個性

泡盛の個性は原料にもみられる。米の輸入が制限されていた頃から、泡盛造りのためにタイ米を輸入しているのだ。一五世紀のシャム(タイ)との交易で泡盛の製法が沖縄に伝えられたが、その伝統を大切にしているといってもよい。
 おもにタイの砕米(砕いた米)を原料にしていたが、最近になって砕いていない丸米に切りかえる蔵元も出てきている。砕米よりも丸米のほうが、風味がよくなるともいわれている。 「タイの米はうまくない」と、日本人の評判はあまりよく ないが、これは単に飯米においての嗜好である。主食として食ペる米がまずいから酒にしてもまずいというのは誤りだ。 日本酒にも酒造好適米があるように、タイ米にも泡盛造りにお いて優れた効果がある。
 明治・大正にかけての記録によると、泡盛の原料には、沖縄 産の米や粟、それに中国産の米が使われていた時期がある。しかし、タイ米は、硬質で麹が造りやすく、もろみの温度 管理がしやすい。さらにアルコールの収量が多く、独特の風味を醸し出してくれる。これらのことから、タイ米が泡盛にいちばん適した原料であることがわかり、現在ではタ イ米での泡盛造りが定着している。




本格焼酎の源泉は泡盛のあり
泡盛は、ウイスキーやブランデーと同じ蒸留酒の仲間である。蒸留の技術がなければ、これらの酒を造ることはできない。日本に初めて蒸留の技術が伝えられたのは15世紀の沖縄、当時の琉球王国である。泡盛の歴史はここから始まる。 当時、琉球は東南アジア諸国と交易をしており、シャム (現在のタイ)の南蛮がめで熟成されたラオロン酒が渡来する。それと同時に蒸留技術も伝わり、泡盛の原型が生産され始めた。  これが後に九州へ渡り、現在の焼酎文化を形成していく。日本の焼酎文化の原点は、この泡盛にある。