焼酎王国・鹿児島

鹿児島の飲み屋へ行って「お酒をください」と言った ら、出てくるのはいも焼酎。絶対に日本酒は出てこない 日本酒が飲みたい時は、「日本酒」 あるいは「清酒」と言わなければ出してもらえない。それほど鹿児 島では「酒=いも焼酎」が常識として定着している。  
いも焼酎といえば鹿児島といわれるほど、鹿児島はいも焼酎 の本場、いわば「焼酎王国」。いもを含む本格焼酎の生産も日本一である。 現在、いも焼酎の製造は、鹿児島県と宮崎県の南部(旧薩摩藩があった地域)、つまり旧薩摩藩の領内が中心。それも、 最初にさつまいもがもたらされたのが、鹿児島だったから である。  さつまいもの原産地は中南米。ルソンを経て琉球に伝わ ったのが、1605年のこと。1698年に、種子島領主に琉球王が 一籠のさつまいもを贈ったのが、日本にもたらされた最初であった。 土地の80%がシラス台地でおおわれた薩摩藩では、米の節約になるので、いも焼酎の製造を奨励し税金を免除した結果、それまでの米焼酎や雑穀焼酎に代わり、急速に浸透し、現在の焼酎王国の基盤ができた。 さつまいもは、鹿児島では昔から「唐いも」といい、いも焼酎は「から(ん)いも焼酎」と呼ばれて親しまれてい る。




生の原料を使う唯一の蒸留酒
原料のさつまいもは、かつては「農林二号」が多かったが、 現在では「黄金千貫」や「南豊」などが中心になっている。 蔵元が焼酎造りにカを入れるようになった結果、農家と契約して有機栽培したさつまいもを使用する蔵も多くなっ た。  
さつまいもは、麦や米、そばなどのように乾燥して保管す ることができない。 生の素材を原料に使用することが、他の本格焼酎にない第 一の特徴である。  第一の特徴は、原料のさつまいもが新鮮でないと造れな いので、日本で造られている本格焼酎を含むすべての蒸留 酒のなかで、いも焼酎だけが仕込みの季節が限られていること。  つまり、いも焼酎の仕込みは、さつまいもの収穫時期(9 月〜11月)に集中して行われる。もちろん、蒸留して完 成したいも焼酎は貯蔵しておけるので、出荷は年中できる。
 かつては日本酒も「寒造り」といって、醸造が冬期に限られていたが、現在は技術の進歩によって、一年中造られ るようになった。  現在、新鮮な状態でさつまいもを保管する方法が研究さ れているので、季節を問わず、いつでもいも焼酎の仕込み ができるようになるかもしれない。



いもくささかなくなり、飲みやすくなった
 第三の特徴は、なんといってもさつまいも特有の香り。 この香りがないといも焼酎ではないと思われていた。だが、いも焼酎ファンにはたまらない香りも、嫌いな人は臭いをかいただけで敬遠してしまう。このいもくささが、いも焼酎の全国への普及を困難にした原因のひとつである。  しかし、いもくささを少なくする研究が進められ、現在ではかつてのようないもくさを主張する焼酎は少なくなった。いもくささを抑え、ほのかな甘い香りが主流になって いる。 また、飲み方の変化もいもくささをなくしてきている。お湯割りでは、 どうしてもいもの香りが強く感じられがちだが ロックやクラッシュアイスで飲むと、いもくささがなくなり、さつまいものほのかな甘さが強調されるようになり、 飲みやすくなるからである。  かつては貯蔵・熟成しないことが、他の本格焼酎にはみ られない特徴であった。長く貯蔵すると、さつまいも特有の香りや風味が なくなることや、さつまいもの油成分が酸化して油臭が出てくるからである。  だから、新鮮な造りたてを飲むのが、いも焼酎の常識であった。 蒸留したばかりの新酒は、どんな酒でも荒々しい辛味があるのだが、 いも焼酎にはその辛味がないから熟成しなくても飲めるわけだ。 しかし、最近、いも焼酎にも長期熱威したものが出てきている。 焼酎も蒸留酒なのだから、ウイスキーと同じように樫樽に貯蔵しようというわけである。  樫樽に貯蔵することによって、いもくささがなくなり、まろやかな風味が生まれてくる。 当然、ウイスキーと同じように、樽の色が焼酎に着くことになる。しかし、酒税法 の規制があり、一定以上の濃さにできないのが現状。  樽の他にも、かめ貯蔵に挑戦する蔵も出てきている。泡盛の古酒がかめに貯蔵するのと 同じである。こちらも、長期熟成によって風味が出てくる。  このように、いも焼酎もかつてのイメージとはだいぶ変わってきている。それだけ、飲みやすくなったので、一度はアタックしてみよう。