焼酎は世界に誇れる日本の蒸留酒
 世界で飲まれている酒は、その造り方によって、醸造酒、蒸留酒、混成酒の三つに分けられる。  醸造酒は、穀物や果物などを発酵させて造る酒で、米から造る日本酒や、麦から造るビール、ぶどうから造るワインなどが代表的醸造酒。
 蒸留酒は、醸造酒をさらに蒸留して造る酒で、麦の発酵したものを蒸留したものがウイスキー、 ぶどうの発酵したものを蒸留したものがブランデーで、ほかにもジンやラムなどがある。
 混成酒は、醸造酒や蒸留酒にいろいろな薬草や果物、花、香料などをまぜて造る酒で、グレープ・ ブランデーにアニスシードの香りをつけた「ウゾ」などのリキュールが有名だが、焼酎に梅の実をつけた「梅酒」も混成酒の仲間。
 このなかで、焼酎は蒸留酒に分類される。さつまいもや米、麦など原料は異なるが、原料を発酵させたものを蒸留してできるのが焼酎である。日本でも、ブランデーなどが造られているが、日本 を代表する蒸留酒といえるのは焼酎だけであろう。  もちろん、同じ大麦を原料として造られるウイスキーと麦焼酎では蒸留という方法は同じでも、 その前の工程がちがってくるから、できあがった酒は同じ風味、味を持っているわけではない。それは、ウイスキーは麦芽を使い、麦焼酎は麹を使うという、発酵の仕方がちがうからである。  同じ蒸留酒といっても、風土や気候、歴史によって、その造り方は異なっている。



本格焼酎と甲類はここがちがう

  焼酎というと、レモンサワーやウーロンハイなどを思い浮かべる人が多い。しかし、焼酎には造り方によって二種類あるのは、意外と知られていない。  焼酎は、酒税法によって「本格焼酎」(焼酎乙類)と「焼酎甲類」のふたつに分類されている。かつては乙類といわれていたが、現在では本格焼酎とよばれる。甲類は「ホワイトリカー」のことをさす。焼酎のラベルに、それぞれ「本格焼酎」「甲類」と表記されているので、ラベルを見ればすぐわかる。 二つの焼酎は醸造方法もちがっている。甲類の主な原料は、精糖過程の副産物である糖蜜や租留アルコール。その多くは輪入されている。  蒸留は連続式で、蒸留された原酒はアルコール度が約96度もある。甲類はアルコール度が36度未満に制限されているため、この原料アルコールを水て薄めて出荷している。純粋アルコールを水で薄めた酒なので、無色、無臭。そのため、レモンサワーなどで割るのに適している。 一方、本格焼酎の原料は、さつまいもやさとうきび、麦、米、そばなどはでんぶん質、糖分を多く 有する農産物。蒸留はウイスキーと同じく単式蒸留器で行われる。  甲類が連続して蒸留を行い、原料の持つ香りや風味をなくしてしまうのに対して、単式蒸留では 原料の持つ香りや風味を逃がさない。原料の香りや風味が生きているため、貯蔵・熟成することによって、まろ溶とつクが生まれてくるのも、本格焼酎の特徴である。
 本格焼酎を飲む時に、炭酸水などで割らないで、生のまま、あるいはロックやお湯割りにするのが よいといわれるのは、本格焼酎の持つ香りや風味をじっくり味わうためである。 アルコール度は45度以下と決められている。 かつては25度の本格焼酎が多かったが、現在では蒸留酒としての特徴を生かすために、40度以上の原酒も造られるようになっている。




日本の風土に根ざした蒸留酒

焼酎の歴史は古い。「焼酎」という文字が、文献 に見られるのは、450年ほど前の永禄二年(1559年)。鹿児島県大口市にある郡山八幡神社の棟木札に、次のような落書が書かれていた。
其時座主は大キナこすでをちやりて一度も焼酎を不被下候 何共めいわくなこと
「座主(神社の神職)がケチで、社殿の普請をし たのに、一度も焼酎を出してくれなかった」とい う不満を書いた落書である。落書に出てくるくらい、当時では焼酎が一般的な飲み物であったことがうかがえる。  
本格焼酎のひとつである泡盛は、それより前14世紀後半には造られていた。琉球(沖縄)へは、 タイ(当時のシャム)から蒸留酒の製法が伝えられ、琉球から薩摩にその製法が伝えられたといわれている。  当時の原料は、米のほか粟などの雑穀が使われていた。17世紀にさつまいもが普及すると、い も焼酎も造られるようになるが、主流は米や雑穀であった。その後、薩摩藩が米の節約になるいも 焼酎の税金を免除したので、米焼酎からいも焼酎へと転換していき、現在の本格焼酎の基礎ができた。  焼酎はかつては「焼酒」といわれていた。文字通り「醸造された酒を焼いて造られた酒」という 意味からつけられた。「焼く」には「熱する」とい う意味もあるから、醸造酒を鍋に入れ、熱して出てくる蒸気を冷やして造る酒というわけである。  中国では、強 い酒のことを 「酎」とよんでいるところから、 「醸造酒を焼いて造る強い酒」 という意味で 「焼酎」と呼ばれるようになった。
 本格焼酎には、もろみ取り焼酎と粕取焼酎の二種類がある。粕取り焼酎は、いも焼酎や麦焼酎のように麹を造り、原料のさつまいもや大麦を加えてもろみを造り、その酪を発酵させる焼酎のこと。
 もうひとつの粕取焼酎は、日本酒を造る過程でできる酒粕に水を加えて液状にしたものを蒸留して造られる。名前はよく似ているが、戦後直後に 出回った「カストリ焼酎」とはちがい、本物の焼酎である。  現在でも、日本酒を造っている蔵で、粕取焼酎 を造っているところがあるが、ほとんどの本格焼酎はもろみ取り焼酎となっている。
 蒸留方法の改良や貯蔵・熟成の研究など、蔵元の努力によって、モンドセレクションをはじめ世界的コンクルールで金貨を受賞する本格焼酎がいくつも登場した。日本を代表する蒸留酒として、 本格焼酎が世界的に認められた結果である。  本格焼酎は、大地の恵みを原料とし、日本の気候・風土を生かした酒造りが生んだ蒸留酒である。 スコットランドのきびしい自然と風土がスコッチ を生んだように、日本南部の温暖な気候と風土が本格焼酎を育んだ。本格焼酎は日本の風土に根ざ した蒸留酒といえる。